変分法 その3の中で"最速降下曲線は等時性を持つ"というお話をしましたが,今回はこれを確認してみたいと思います
質量mの物体を任意の初期高さy0から静かに手を離し,サイクロイドに沿って運動する問題を考えます
ここで摩擦や空気抵抗は無いものとします
isochronous.wxm
m : 物体の質量
g : 重力加速度
A : サイクロイドの動円の半径
y, y0 : 任意高さと初期高さ
v : 速度
g, A, y0の正負をassume関数で定義します(%i1)(画面出力は省略)
位置エネルギーと運動エネルギーの保存則を%o2式に示します
上式をvについて解いた結果を%o3式に示します
s : 媒介変数
sの変域をassume関数で定義します(%i4)(画面出力は省略)
余弦の半角の公式を%o6式に示します
ここで"halfangles : true"は半角の展開を有効にするオプションです
サイクロイドにおけるyの媒介変数表示を%o7式に示します
上式をcos(s)について解いた結果が%o8式となります
これを%o6式に代入してまとめると%o9式,両辺の平方根をとって%o10式を得ます
鉛直方向の速度は%o11式で与えられます
この逆数を%o3の左式と%o10式を用いて書き換えた結果が%o12式です
形式的に書きますが,これをy0からサイクロイドの底(-2A)まで積分したものが時間Tとなります(%o13)
(Aとgは定数なので∫の外に出せます)
積分計算を行うと2A+y0の正負を聞いてきますので正値(p)を入力します
計算結果は%o14式となり,Tはy0に依存しない一定の値であることが解ります
ということで,サイクロイドの等時性が確認できました
追記
サイクロイドの等時性に対して単振子(円弧)は等時性を持ちません
なので振子の振り幅の変化によって周期も変わってしまいます
ちなみに単振子の正確な周期の計算は楕円積分(elliptic integral)を用いた大変めんどくさいものになります
時計という最も等時性を要求される機構に単振子を永らく採用してきたんですから人類も割と適当ですねヽ( ´ー`)ノ
こうした問題を改善するための手法として
- 振り幅が変化しない様に減衰を抑える(錘を重くする,空気抵抗を減らすため錘を平らにする等)
- 振子の半径を長く,振り幅を小さくする(サイクロイド近似,単振動近似)
- 振子の半径を振り幅に応じて調整する(サイクロイド振子)
等が挙げられます