ガロア理論 その4(判別式)

ガロア理論のエントリーで交代群(偶置換のみからなる部分群)を扱いましたが,
「何故偶置換が重要なのか?」という理由の一端として判別式(discriminant)のお話をしようと思います

discriminant.wxm
3次方程式の判別式

%i1でパッケージ"sym"をロードします(画面出力は省略)
Warning以下の文言はresolvante関数についての注意書きで,今回は特に問題ありません
一般の3次方程式について考えますので,次数 N に 3 を代入します(%o3)(画面出力は省略)
最高次の係数を 1 とした3次方程式を%o6に示します
この方程式の解を α, β, γ とし,1次式の積と同一視します(%o7)


%o6式と%o7式の各係数から%o8~10の等式が得られます
これらは基本対称式(elementary symmetric polynomial)と呼ばれ,解の入れ替えに対して不変です


3つの解の差積Δを%o11式で定義します
重解の有無は Δ = 0 の真偽を調べれば良いのですが一つ問題があって,
Δは解の互換の操作に対して不変ではなく符号が入れ替わってしまうのです
そこでΔを2乗したDを判別式として定義します(%o12)
よってDは解の互換に対しても不変となり,基本対称式(=方程式の係数)で表すことが出来ます
実際にtcontract関数を用いてDの短縮形を計算します(%o13)
elem関数を用いて上式を分解します(%o14)
e1~3といった形式的値を係数に置き換えることで3次方程式の判別式が求まります(%o15)


4次方程式の判別式

同様にして一般の4次方程式について考えますので,次数 N に 4 を代入します(%o16)(画面出力は省略)
最高次の係数を 1 とした4次方程式を%o18に示します
この方程式の解を α, β, γ, δ とし,1次式の積と同一視します(%o19)


%o18式と%o19式の各係数から%o20~23の等式が得られます
これらはもちろん基本対称式で解の入れ替えに対して不変となります

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4つの解の差積Δを%o24式で定義します
Δを2乗した判別式Dを%o25式で定義します
tcontract関数を用いてDの短縮形を計算します(%o26)
elem関数を用いて上式を分解します(%o27)
e1~4といった形式的値を係数に置き換えることで4次方程式の判別式が求まります(%o28)

ということで,3次及び4次の判別式Dが基本対称式で表せることを確認できました

追記
・重解の有無を判別するという意味では差積Δがより本質的です
・重解の重複度によって入れ替える解の数(対称群の次数)が下がります
・差積Δは偶置換(交代群のすべての元)によって不変です
・差積ΔはQ上の最小分解体Lに含まれます