ガロア理論 その1(3次方程式の可解性)

今回はガロア理論を用いて「3次方程式の可解性」がどのように確認出来るのかを見てみます

例によってMaximaを使うのですが,群の操作がめんどくさいです('A`)
素直にGAPを使えばよかったかも・・・

galois_theory1.wxm

一般の3次方程式について考えますので,次数 N に 3 を代入します(%o1)
最高次の係数を 1 とした3次方程式を%o3に示します
この方程式の解を α1~3 とし,1次式の積と同一視します(%o4)
これより方程式は3つの解の入れ替えに対して不変であることが解ります

【対称群S3】

3つの要素を並べ替える操作を元とする群 S3 は対称群(symmetric group)と呼ばれ,その位数は 3! = 6 です
S3 の元は {e, (1,2), (1,3), (2,3), (1,2,3), (1,3,2)} です
これらの元を置換行列で出力した s1~s6 を配列としてまとめて S3 に代入します(%o7)
ここで e は恒等置換です


いま In に配列 {1,2,3} を代入します(%o9)
In に左から s1~s6 をそれぞれ作用させてちゃんと入れ替えがなされるかを確認します(%o10)
この結果を見ながら s1~s6 を分類していきます

【恒等置換】

まず s1 は入れ替え無しなので e となります(%o11)

【互換】

(1,2) は t1として s3 を,
(1,3) は t2として s6 を,
(2,3) は t3として s2 をそれぞれ代入します(%o14~16)

【巡回置換】

(1,2,3) は p1 として s4 を,
(1,3,2) は p2 として s5 をそれぞれ代入します(%o18~19)

以上でS3の6つの元をすべて分類出来ました
ここで偶置換(互換の偶数回の積)は恒等置換 e と巡回置換 p1~p2 です

交代群A3】

S3 の偶置換のみからなる部分群 A3 は交代群(alternating group)と呼ばれ,その位数は 3 です
A3 の元は {e, p1, p2} です(%o21)
p1 及び p2 が偶置換であることをそれぞれ確認します(%o23~24)

【自明な部分群E】

E の元は {e} です(%o25)
E も A3 の正規部分群です(E ◁ A3)


交代群 A3 は S3 のすべての元 g に対して g.A3.g^-1 = A3 が成り立ちます(%o29)
したがって A3 は S3 の正規部分群です(A3 ◁ S3)

可解性の確認

S3 は次のような正規列を持っています: E ◁ A3 ◁ S3
A3 は位数 3 の交代群であり(単純群ですが位数=素数で)これは可解群です
剰余群 S3/A3 は位数 2 の巡回群(%o38)であり,これも可解群です
よって E ◁ A3 ◁ S3 はアーベル正規列を形成し,各剰余群も可解であるため S3 自体が可解群となります

ということで,一般の3次方程式の可解性が確認されました