変形勾配テンソルと歪テンソル

前回は歪ベクトル(の垂直成分)について触れましたが,今回は歪テンソルのお話です

strain tensor1.wxm

X : ある基準時刻における物質点の位置ベクトル
x : 現時刻における物質点の位置ベクトル
F : 変形勾配テンソル

まずは変形勾配テンソルの定義を示します
分母分子に∂(ラウンド)の記号を入れたかったのですがMaximaで入力する方法が判らない…(´・ω・`)
入っているという心の目で見てください
変形勾配テンソルをディアディック表示したものを次式で示します

F =∂x[i]/∂X[j] e[i](x)e[j]

i, j はfree index,(x) はテンソル積(tensor product)を表します


http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/ryooji_f/20110404/20110404192428.png
u : ある基準時刻から現時刻までの変位ベクトル( u = x - X )

変位ベクトルで変形勾配テンソルを書き直します
同様にディアディック表示したものを次式で示します

F = (∂u[i]/∂X[j]+δ[ij]) e[i](x)e[j]

δ[ij] はKroneckerのデルタ記号です( i = j → 1, i ≠ j → 0 )


http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/ryooji_f/20110404/20110404192427.png
E : Green-Lagrange歪テンソル
EL : 微小歪テンソル(infinitesimal strain tensor)
(%i6式中のident(3)は3x3の単位マトリックスを表します)
変形勾配テンソルからGreen-Lanrange歪テンソルを計算したものが%o6式です

E = 1/2(∂u[i]/∂X[j]+∂u[j]/∂X[i]-∂u[k]/∂X[i]∂u[k]/∂X[j]) e[i](x)e[j]

添字のkはdummy indexで,総和規約に従います

微小変形( u/X << 1 )が成り立つとして2次の項を無視したものが%o7式です

EL = 1/2(∂u[i]/∂X[j]+∂u[j]/∂X[i]) e[i](x)e[j]

ELは線形理論で扱うオーソドックスな歪テンソルです
材料力学や構造力学でお馴染みのヤツですねヽ( ´ー`)ノ


追記
maximaでは全微分偏微分どちらもdiff関数を使い,表記も"d"となります
depends関数で依存関係を宣言しておくことで全微分偏微分を区別するみたいです