群 その1

今回は群(group)のお話です
集合Gの元g, h, kに対しての二項演算"・"を考えた時,以下の4つの条件を満たす場合に"群"を成すと言います

  • 演算に関して集合が閉じている → g・h∈G
  • 結合法則が成り立つ → g・(h・k) = (g・h)・k
  • 単位元 e が存在する → g・e = e・g = g
  • 逆元 g^-1 が存在する → g・g^-1 = g^-1・g = e

構造力学に関係のありそうな具体的な演算について,群の定義を満足するかどうかをmaximaで確認してみます
group1.wxm

実数a, bの加法について考えます
a + b は実数なので閉じています(%o1)
結合法則が成り立ちます(%o2)
単位元(0)が存在します(%o3)
逆元(-a)が存在します(%o4)


ということで,実数の加法は群を成します



実数a, bの乗法について考えます
a * b は実数なので閉じています(%o5)
結合法則が成り立ちます(%o6)
単位元(1)が存在します(%o7)
逆元(1/a)が存在します(%o8)
一見良さそうですが,1/a は a≠0でなければ成り立たないので0の逆元は存在しません


ということで,"0を除く"実数の乗法は群を成します



x→p*x+qの線形変換について考えます(p, qは実数,p≠0 )
a(x)〜c(x)を%o9〜11式で定義します
a(b(x))の計算結果は p = a1*b1, q = a1*b0+a0 とそれぞれ実数なので p*x+q の形となり,閉じています(%o12)
結合法則が成り立ちます(%o13)
単位元(z(x) = x)が存在します(%o14,15)
a(x)の逆元(y(x) = x/a1-a0/a1)が存在します(%o16〜18)


ということで,p*x+qの線形変換fは群を成します



ベクトルa, bの加法について考えます
a〜cのベクトル成分を%o20〜22式で定義します
a + b はベクトルなので閉じています(%o23)
結合法則が成り立ちます(%o24)
単位元(零ベクトル)が存在します(%o25,26)
逆元(-a)が存在します(%o27)


ということで,ベクトルの加法は群を成します



正則行列A, Bの乗法について考えます
A〜Cの行列成分を%o28〜30式で定義します
A.B は正則行列なので閉じています(%o31)
結合法則が成り立ちます(%o32)
単位元単位行列 I)が存在します(%o33,34)
逆元(A^-1)が存在します(%o35)


ということで,正則行列の乗法は群を成します


追記
上の4つの条件に加えて次の条件を満たす場合,この群のことを特に"アーベル群"(可換群)と呼びます

  • 交換法則が成り立つ → g・h = h・g