せん断流理論 その1

以前梁断面のせん断応力分布 その2でI型鋼断面のせん断応力分布を計算しましたが,軸応力の増分に対する釣合い条件を解くという面倒なものでした
今回は"せん断流(shear flow)"を用いた,より簡便な方法でこれを解いてみたいと思います
流体力学で扱われる"せん断流"とは異なりますのでご注意ください('A`)

  • 薄肉梁断面を水路に見立て,その合流・分岐でせん断流れ(q = τ*t)が保存されます
  • 開断面の端部は自由端とし,せん断応力は0とします

shear flow1.wxm

z : 図心からの深さ
t2 : フランジの板厚
V : 断面に作用するせん断力
Q, I : 図心まわりの断面1次・2次モーメント
H : ウェブ経路の長さ( = D - t2 )
τs1 : 上部フランジ片側のせん断応力
上部フランジの片側に対してt*zの積分計算を行った結果をQとして%o3式に示します
自由端からのせん断応力分布を計算した結果をτs1として%o4式に示します



τs2 : 上部フランジ片側のせん断応力
同様にして,上部フランジのもう半分に対して積分計算を行った結果を%o5式に示します
自由端からのせん断応力分布を計算した結果をτs2として%o6式に示します



t1 : ウェブの板厚
τs3 : ウェブのせん断応力
フランジの中央におけるせん断流をそれぞれ q1,q2 として%o9, 10式に示します
ウェブに対して積分計算を行った結果を%o11式に示します
ウェブの上端にq1+q2が流れこむことに留意してせん断応力分布を計算した結果をτs3として%o12式に示します



せん断応力τs3が最大となる位置を求めます(%o13)
τの最大値τmaxを求めます(%o14)
Vをウェブ断面積Awで除したものを平均せん断応力τmeanとして%o15式に示します
τmax/τmeanを%o16式に示します
これより断面の形状寸法(D, B, H, t1, t2, I)に依存することが解ります


http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/r/ryooji_f/20161204/20161204233102.png
梁断面のせん断応力分布 その2と同じ形状寸法を代入します(画面出力は省略)
フランジのせん断応力τs1およびτs2を合わせて%t25にプロットします



ウェブのせん断応力τs3とτmeanを%t27にプロットします
(青線がτs3,赤線がτmeanを表します)



τmax,τmean及びcの数値を%o28〜30式にそれぞれ示します