変分法 その2

前回に引き続き,変分法の計算例のお話です


カテナリー曲線】
伸縮せず,均一な重さを持つ紐状のもの(たとえば鎖)を吊り下げたときどんな曲線になるか?という有名な問題です
答えは懸垂曲線またはカテナリー曲線(catenary)です(媒介変数表示でちょっと触れました)
catenary.wxm

y : 曲線
y' : dy/dx
ds : 線素(line element)の長さ
g, m : 重力加速度と曲線の単位長さ質量
U : 曲線のポテンシャルエネルギー
%o2にてyとy'がxに依存することを宣言します(画面出力は省略)
曲線yの線素dsの長さを%o3式に示します
被積分関数Fの定義を%o4式に示します
形式的に書きますが,曲線のポテンシャルエネルギーUはFの作用(区間A-Bの積分)として%o5式で与えられます
この汎関数Uを最小化する(Uの第一変分δU = 0 を満足する)yを求める問題ということになります



Fの作用を最小化する問題かつFがxに陽(explicit)に依存しないのでベルトラミの公式(Beltrami identity)が使えます(%o6)
Fを%o6式に代入して偏微分を計算し,ついでにy'も書き直した結果を%o8式に示します
左辺の分母を払い,両辺をxで1回微分し,d2y/dx2について解いた結果%o9式を得ます
この2階の常微分方程式をode2関数を使って解いた結果を%o10式に示します(%k1, %k2は積分定数



得られた曲線が積分定数%k1および%k2を含んでいるので境界条件を与えて解きます
点O[0, 0]を通り,点Oにおける接線勾配を0とすると%o12, %o13式を得ます
%k1, %k2についてそれぞれ解いた結果を%o14, %o15式に示します
上の結果よりyは%o16式となります



実際にグラフに描いて確認してみましょう('A`)
a = 1 としたときの懸垂曲線を青線で,比較のための放物線(x^2)を赤線で%t17にプロットします


追記
懸垂曲線は神社仏閣の屋根やお城の石垣等古くから使われており,日本人には馴染みの深い曲線です
岩国の錦帯橋のアーチ形状も懸垂曲線であることが指摘されています
西洋建築で懸垂曲線をモチーフにした例としては,コロニア・グエル教会やサグラダファミリアアントニオ・ガウディの作品が有名です