第1・第2Piola-Kirchhoff応力テンソル,Biot応力テンソル

Cauchy応力テンソル以外の応力表現について考えます


久田俊明著「非線形有限要素法のためのテンソル解析の基礎」125頁の例題【4.9】を解いてみます
これは引張力Pが作用しつつ剛体回転するトラスの問題です
基準配置から時刻tまでにL*H*H→l*h*hだけe[1]軸方向に引伸ばされた後
時刻tから時刻τまでにe[3]軸まわりにθ[rad]だけ剛体回転を受けます

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R[t] : 時刻tの剛体回転
U[t] : 時刻tの右ストレッチテンソル
F[t] : 時刻tの変形勾配テンソル
時刻tにおけるR, U, Fをそれぞれ%o1, %o2, %o3式に示します
基準配置→tまではトラスは剛体回転しないため,R[t]は単位テンソルとなります(%o1)
(以下,添字t付きは時刻tの,τ付きは時刻τの諸量をそれぞれ表すこととします)



T : Cauchy応力テンソル
J : 体積変化率(Fのdeterminant)
Π : 第1Piola-Kirchhoff応力テンソル
S : 第2Piola-Kirchhoff応力テンソル
Σ : Biot応力テンソル
Tは時刻tの現配置において定義される応力テンソルで,真応力(true stress)とも呼ばれます
%o4に示す様に,荷重方向の垂直応力成分はPを現配置の断面積h^2で除した値となります
これを基準として時刻tにおける各種応力テンソルΠ,S,Σを計算したものを%o6, %o7, %o8式にそれぞれ示します


Πは基準配置において定義される応力テンソルで,公称応力(nominal stress)とも呼ばれます
(垂直応力成分は基準配置の断面積H^2で除した値となっています)
SはΠの応力成分に対して変形勾配の逆数(F^-1)の成分がかかってくるのが特徴です
Σは1/2*(S.U + U.S) を使っても計算できます
定義より,SとΣは剛体回転のもとで不変となります



時刻τにおけるR, U, Fをそれぞれ%o9, %o10, %o11式に示します
時刻t→τではトラスはストレッチしないため,U[τ]はU[t]と一致します



時刻τの現配置におけるTを%o12式に示します
時刻t→τではトラスはストレッチしないため,J[τ]はJ[t]と一致します(%o13)
以下同様に,時刻τにおける各種応力テンソルΠ,S,Σを計算したものを%o14, %o15, %o16式にそれぞれ示します


  • 第2Piola-Kirchhoff応力テンソルは剛体回転に対して不変となります
  • Biot応力テンソルは剛体回転に対して不変となります


非線形有限要素法のためのテンソル解析の基礎

非線形有限要素法のためのテンソル解析の基礎